2011年05月30日

県首脳には民主主義思想がない

県首脳には民主主義思想がない
 県は新たな沖縄振興に向け、「沖縄21世紀ビジョン基本計画」の素案をだした。基本指針は「自立」だという。
 素案は「自立的な地域社会の構築を図り、県民一人一人が自信と誇りを持てる沖縄の創造に向かっていく」とうたったいる。
 県の川上企画部長は、「なぜ沖縄が自立を求めるのか。最終目標は自分の足で立つこと、自信と誇りを回復すること。沖縄はずっとそれを求めてきた」と語り、「財政移転が多いと声高に言われるが財政移転のない地方はない。これでは自信も誇りもなくなる。そこから脱却を図るところまで来ている」と述べている。

 上原副知事は「自立は自給自足や孤立ではない。逆に自分の意思で行動し、外とのネットワークを広げ深める中で連携・連帯を求められるようになり、沖縄抜きでは駄目だと周りが評価する状態」と定義している。

 沖縄振興というのは政府から毎年数千億円の予算が降り、その予算を使うことである。予算の使い方次第で沖縄経済の発展を大きく左右する。ところが県首脳は経済発展ではなく「自立」を基本指針にした。自立には政治的な自立と経済的自立に大別されるが、県首脳のいう「自立」は抽象的であり、沖縄振興との関係が具体的ではない。

 県が掲げる抽象的な「自立」を県民は歓迎するだろうか。県民一人一人が求める第一は「自立」ではなく生活が豊かになることだと思う。大金持ちになりたいとは思わなくても中流生活を遅れるようになるのはほとんどの県民が望んでいるだろう。しかし、上原副知事は県民の生活が豊かになることを重視していない。

 上原副知事は、「沖縄抜きでは駄目だと周りが評価する状態」を目指している。抽象的で具体的イメージが沸かないが、少なくとも県民の生活が豊かになることとは外れた方向であることは間違いない。上原副知事は、県民所得は全国一低いとはいえないとか、政府の交付金が沖縄が一番多いというのは間違っているなどと述べている。県民所得が低いこと、政府の交付金が高いことに違いはないのに、県民所得は全国最低ではないということによって、県民所得の向上を県の政治課題からはずしているし、沖縄の貧困も問題視していない。

 上原副知事が目指しているのは、県民の生活向上ではなく、他県にはなく沖縄県にあり、しかも他県に自慢することができるものをつくることである。それが恩納村の大学院大学であり、那覇空港のハブ化である。しかし、このふたつとも県が主導できるようなものではない。それなのに上原副知事は大学院大学と那覇空港のハブ空港は他県に誇れるし他県に「沖縄抜きでは駄目だと周りが評価」するようになると確信しているのである。
 
 沖縄の輸出は1億1500万円、輸入は235億500万円である。これが沖縄の産業の実力である。那覇空港をハブ化しても、沖縄の産業が輸出できる商品を生産しないと、沖縄へのメリットは小さい。那覇空港のハブ化は全日空に任せればいい(県にハブ化を主導する実力があるか疑問) 県は沖縄産業の発展に力を注ぐべきだ。




県首脳には民主主義思想がない

 宮元大阪大名誉教授は、次期沖縄振興計画について、「中央依存体質は変わっていない」と批判している。しかし、従来の補助金ではなく一括交付金を政府に要求していることを評価しているが、今までも振興策は県が企画を立て政府が追認してきた過去があり、必ずしも一括交付金になれば沖縄振興が改善するとはいえないことは指摘していない。
 宮元大阪大名誉教授は県の次期振興計画52施策のうち39の施策がすべて国の税の特例、規制緩和、金融支援であることを指摘し、「県自らの施策とはいえない。過去の振興計画のデメリットに対する批判が乏しい」と指摘している。その通りだ。県は米軍基地は返還されれば県はなにもしなくても、経済効果は三,四倍であると発表した。
 県には沖縄経済を発展させる理論がない。

 宮元大阪大名誉教授は「過去の振興計画のデメリットに対する批判」と述べている。批判をする責があるのが沖縄のマスコミであり、学者・知識人である。しかし、アメリカ軍問題に関心が強いマスコミ、学者・知識人は県の経済政策に関心が低く、県への批判精神が薄い。宮元大阪大名誉教授も「県民の基地反対の世論を鎮めて米軍基地を保持する政府の政策意図の表れで沖縄差別を生んだ」と基地問題と政府援助の関連を指摘している。
 しかし、沖縄は戦前まで製糖産業以外の産業はなく、戦後の沖縄は自分たちの力で経済を発展させる能力は小さかった。戦後の経済発展を内側から支えたのはアメリカ民政府であり、復帰後は日本政府であった。このことを宮元大阪大名誉教授は知らない。
 県が沖縄振興計画で県自らの施策をつくれないのは、それが県の実力であるのだ。マスコミ、学者・知識人が県の経済政策へ鋭い批判をすることができないのも、それがマスコミ、学者・知識人の実力であると言うしかない。

 琉球新報は見出しを「自立へ発想の転換重要」と書き、県の掲げる「自立」を後押ししている。沖縄に必要ものは自立よりは民間の経済発展であり、県民の生活向上である。県の掲げる「自立」とは県首脳のための実率であり、県がやりたいことに政府が一切介入しないことを「自立」といっているのだ。極論すれば県の「独裁」を「自立」という美名でごまかしているのである。そのことを見抜けないマスコミにはあきれる。


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